インプラント治療では、人工の歯を固定する「土台(インプラント体)」をあごの骨に埋め込んだ後、骨としっかり結合するまで数ヶ月の期間が必要になります。その間、歯がないままだと「見た目が気になる」「食べにくい」「話しづらい」といった不便が生じることも。
そんなときに使われるのが「仮歯(かりば)」です。
仮歯は、治療が終わるまでの一時的な歯ですが、ただの飾りではありません。見た目の回復だけでなく、噛み合わせや周囲の筋肉とのバランスを確認するなど、さまざまな役割を持っています。
Contents
インプラント治療|仮歯の役割
仮歯は見た目を整えるだけでなく、治療の質を高めるための大切なステップです。ここでは、仮歯の具体的な役割についてご紹介します。
- 見た目を整える
特に前歯のインプラントでは、治療中でも自然な見た目を保つことがとても大切です。仮歯を入れることで、人前でも気にせず笑顔になれる方が多くいらっしゃいます。 - 噛み合わせを確認する
本物の歯と同じように使えるか、しっかり噛めるかを確認します。最終的な歯を作る前に、噛み心地やズレがないかをチェックできます。 - 最終的な歯の形を決める準備
仮歯を使うことで、理想的な形や大きさを実際に装着して確認できます。見た目や機能面で問題がなければ、それをもとに本番の歯を作ります。 - 歯ぐきの形を整える(特に前歯)
仮歯には歯ぐきの形を自然に整えるという役割もあります。これにより、最終的な歯をより美しく仕上げることができます。 - 発音や口の感覚を確認する
舌や頬が歯に触れる感覚を調整したり、話しづらさや違和感がないかをチェックすることも仮歯の大事な役割です。
なぜ仮歯を使うの?いきなり「本番の歯」を入れない理由
「最終的な人工歯(かぶせ物)を早く入れてしまえばいいのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、実際には仮歯のステップを飛ばしてしまうと、見た目や噛み合わせに不具合が出るリスクがあります。
仮歯を使うことで、歯の形・大きさ・高さなどを実際にお口の中で試すことができるため、最終的な歯をより精度高く作ることができます。
また、前歯の場合は歯ぐきのラインや見え方が少しの違いで大きく印象を変えてしまうため、仮歯を使って微調整しながら理想的な仕上がりを目指すことがとても大切です。
仮歯を入れている期間はどれくらい?
仮歯をつけておく期間は、治療する本数やお口の状態によって異なります。
たとえば、1本だけのインプラントであれば、仮歯の使用期間は1〜2ヶ月程度で済むことが多いです。
一方で、上下すべての歯をインプラントにするような全体的な治療(全顎治療)の場合には、半年ほど仮歯を使って様子を見ていくこともあります。
この期間中に、噛み合わせや話しやすさ、見た目の印象などを丁寧に確認しながら、最終的な歯の設計を詰めていきます。
仮歯を使うときに気をつけたいこと
仮歯は、最終的な歯をより良いものにするための大切なステップですが、いくつか注意しておくべき点があります。
食事や飲食に関する注意点
仮歯は、最終的な歯に比べて強度が劣ります。そのため、硬い食べ物(せんべいや氷など)や、粘着性の高い食べ物(お餅やキャラメルなど)を噛むと、欠けたり取れたりする原因になります。
また、カレーやコーヒーなど色の濃いものは、仮歯に色がつきやすいため注意が必要です。仮歯が入っている間は、無理にその部分で噛まず、反対側の歯を使うように心がけましょう。
違和感や不具合を感じたら
仮歯は、見た目や噛み合わせの調整のため、何度も微調整を重ねていきます。そのため、装着初期に多少の違和感や噛みづらさを感じることもあります。
しかし、痛みを感じたり、仮歯がぐらついたり、外れてしまったりした場合は、すぐに歯科医院に連絡してください。そのまま放置すると、治療計画に影響を及ぼす可能性があります。
適切な調整や再装着が必要になるため、自己判断で無理に元に戻そうとしないことが大切です。
仮歯はインプラントを成功に導く大切なステップです
仮歯は、ただ見た目を整えるための「仮の歯」ではありません。
最終的なインプラントをより自然で快適なものに仕上げるための、大切なステップです。
噛み合わせや発音、歯ぐきの形、見た目のバランスなど、さまざまな確認と調整ができるのが仮歯の大きな役割。特に前歯など、見た目にこだわりたい部位では、その価値はとても高くなります。
もちろん、費用や期間は多少かかりますが、インプラント治療をより満足のいくものにするためにも、仮歯の役割を正しく理解して、治療にのぞんでいただければと思います。
※医療広告ガイドラインに基づき、自由診療に関する費用および治療に伴うリスク・副作用等の情報を以下に記載しております。
歯を失った部分の顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。顎の骨に固定されるため、天然歯に近い噛み心地や見た目を再現できるのが特徴です。
手術によるインプラント体の埋入後、骨と結合するまで数か月間の治癒期間を経て、上部構造(人工歯)を取り付けます。
インプラント治療に関する費用
内容 | メーカー/処置 | 費用(税込) |
---|---|---|
上部構造(人工歯) | ジルコニア/ハイトランス | ¥143,000 |
ジルコニアステイニング | ¥154,000 | |
ジルコニアレイヤリング | ¥176,000 | |
インプラント体(人工歯根) | プラトン | ¥264,000 |
ネオデント | ¥297,000 | |
ストローマン | ¥330,000 | |
追加処置 | サージカルガイド | ¥66,000 |
ソケットリフト骨造成(GBR) | ¥55,000/本 | |
サイナスリフト | ¥110,000 |
インプラント治療に伴う主なリスク・副作用
インプラント治療は、失った歯の機能や見た目を回復するための効果的な方法ですが、以下のようなリスクや副作用を伴う可能性があります。
- 術後の痛み・腫れ・出血・内出血・感染症
- 神経や血管の損傷による知覚異常・麻痺・大量出血
- 上顎洞の損傷による蓄膿症などの副作用
- インプラントが骨と結合せず再手術や除去が必要になる場合
- 糖尿病や骨粗鬆症など全身疾患によるリスク増加
- 口腔衛生不良によるインプラント周囲炎と脱落のリスク
- 食べ物の詰まりやすさ・噛み心地の違和感・高額な費用・長い治療期間
これらのリスクをできる限り回避し、安心してインプラント治療を受けていただくためには、経験と実績のある歯科医院を選ぶことが重要です。

北村 英二(きたむら えいじ)
歯科医師/北村総合歯科 院長
1998年、日本大学松戸歯学部卒業。藤井病院歯科・口腔外科部長、水口歯科クリニック新宿院長を経て、2021年に「北村総合歯科」を開業。
「歯科が苦手な方にも安心して通ってもらえる医院づくり」を理念とし、痛みに配慮した丁寧な診療と患者との信頼関係を大切にしている。診療方針の柱は、再治療のリスクをできる限り抑えた“根本的な治療”と、できるだけ歯を削らず・抜かずに「自分の歯を守る」ための医療提供。口腔外科での豊富な臨床経験を活かし、短期的な対処に終始しない長期的な視点での治療を重視している。
- 日本口腔インプラント学会 専門医
- インプラント講習会のインストラクター
- インプラントメーカー公認インストラクター(プラトンジャパン)
- 日本歯科放射線学会 優良医
- 日本歯科医師会 所属
- 多数の学会発表、インプラント専門誌、学術誌での発表実績あり