失った歯を1本だけインプラントにする場合に比べ、複数の歯をインプラントにする場合は、より複雑で入念な治療計画が必要です。

インプラントの位置、サイズ、傾きなどをそれぞれ検討し、患者さんひとりひとりの口腔状態に合わせた治療が求められるからです。

ここではこのような複数のインプラント治療を検討されている方の選択肢のひとつとしてAGCガルバノシステムについてご紹介します。

AGCガルバノシステムとは

AGCというのは「Auro Galvano Crown」の略で簡単にいうと被せ物の一種です。

歯型に金(ゴールド)をコーティングし、その上にセラミックを焼き付けるという特殊な方法で作られています。

なぜ、こんな作り方をするのか?というと金の特性やその製造方法が、様々なメリットになるからです。

AGCで使用される金がもたらすメリット

もともと、金というもの自体、歯科治療において重要な素材として長い間使用されてきました。

治療の素材として金を使用することは次のようなメリットがあるからです。

  • 生体適合性
    金は生体適合性に優れているためアレルギー反応が起こりにくい素材といえます。そのため、一般に金属アレルギーを持つ人でも純金はアレルギー反応を引き起こしにくいと言われています。
  • 耐摩耗性(たいまもうせい)
    耐摩耗性というのは、摩耗に対してどれだけ耐性を持っているかを示す性質のことです。金は耐摩耗性が高く、歯の噛み合わせや咀嚼(そしゃく)に強く、結果として高い耐久性をがあります。
  • 耐蝕性(たいしょくせい)
    金は錆びにくく、お口の中の湿度や化学的な変化に影響を受けにくいという点でも長期間にわたる耐久性を維持できます。
  • 加工性
    金は金属の中でも比較的柔らかく加工がしやすい素材です。そのため、患者さんの歯の形状や咬合に合わせてカスタマイズされた被せ物を作ることに優れています。

以上のようなメリットから、金を使用しているAGCも高い生体適合性に加え、優れた耐摩耗性、錆びにくさ、アレルギー反応のリスクが低いという性質を持っています。

さらに、AGCは特に大きな症例や多数の歯の修復に適していて、インプラント治療においても高い評価を受けています。

その理由がAGCのもたらすメリットにあります。

AGCのメリット

1. セメント不使用による歯周病リスクの軽減

一般的にインプラントを固定する方法は、ネジかセメントでの接着の2つあります。

セメントを使用する場合、人工歯を固定した際に余ったセメントが歯茎に残ることがあり、これが歯周病のリスクになると言われています。

AGCはセメントもネジも使用せず、金の摩擦だけでピタッと密着・固定することができるため、セメントの取り残しによる歯周病や炎症の発生リスクが抑えられます。

2. メンテナンスの容易さ

AGCクラウンは接着剤で固定されていないので、歯医者さんで定期的に取り外しメンテナンスすることができます。そういう点でも一般的なインプラントと比べてメンテナンス性にも優れていると言えます。

4. 平行性の補正が不要

複数の連続した歯をインプラントにする場合、耐久性の問題から人工歯を独立させずに、歯が連結した一体型の上部構造を固定する場合が多いです。

3つの人工歯が連結されたインプラント

そういうときに難しいのが、土台となるインプラント体1つ1つをより正確な角度で埋め込まなければいけない点です。

一体となった上部構造を平行に装着するのに、土台のインプラント体に微妙な角度の違いがあると、それが歪みになり平行を保つための調整が必要になるからです。

その点、AGCは製造段階で精密に作成されるため、最初から歯と骨に対して平行に装着することができるという点で優れています。

精密な上部構造を平行性の補正をせずに作れるという点で治療期間の短縮にも役立ちます。

5. 長寿命とインプラントの寿命延長

金のメリットでもお伝えした通り、金を使用しているクラウンは非常に耐久性があり長期間にわたって使用できるため、AGCはインプラントの耐用年数を向上させます。

AGCのデメリット

いろんな点でメリットの多いAGCですがもちろんデメリットもあります。

端的に言うと非常に高額なことです。

高級な「金」を主成分としているという点、非常に精密で熟練を要する製造方法のため製造コストが高いこと、保険の適用外なので患者さんが費用を全額負担しないといけない点などがその理由です。

このような理由から、AGCはすべての患者さんにおすすめできる治療法とは言えません。

でも、当院にはAGCガルバノシステムを専門に扱う歯科技工所が併設されているため、ラボと連携して患者さんに適したAGCを製造することができます。

もし、ご興味がある方はお話をお聞きになるだけでも結構ですので、まずはご相談ください。

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