インプラントというと、奥歯に1本というイメージが強いかもしれません。

でも、実はインプラントというのは部分入れ歯やブリッジで補っている複数の歯がない方でも治療を受けることが可能です。

複数の歯をインプラントにする場合、患者さんの口腔内の状態や骨の量、欠損している歯の位置や数によって、将来的なリスクを考慮した最適な治療計画が必要です。これには専門的な知識とスキルが求められます。

ここでは、そうした事例をいくつかご紹介しながら、どのような選択肢があるのかを見ていただきたいと思います。

2本の歯をインプラントにする場合

2本の連なる奥歯をインプラントにする場合、治療方法は主に2つあります。

2本が連なった人工歯を2本のインプラントで支える

この方法では、2本のインプラントを埋入し、その上に連結した人工歯(2本の人工歯が1つになったもの)を装着します。当院では、基本的にこちら方法を推奨しています。

2本の人工歯を連結させる理由は、インプラントというのが垂直方向の力には強いものの、横方向の力には弱い傾向があるからです。これを補うために上部構造を1つに連結させ、横方向の力に対する耐久性を向上させて、全体の安定性が増します。

ただ、この場合、片方の人工歯がダメになってしまった場合に、両方とも治さなければいけなくなってしまうので、それが気になる方は次の方法を選択する場合もあります。

それぞれ独立したインプラントと上部構造を入れる

こちらは、それぞれの歯に独立したインプラントを設置して、個別の人工歯を装着する方法です。各インプラントが独立して機能するため、自然な歯に近い感覚と機能を提供します。​ただし、上部構造が連結されていないため、横方向の力に対する耐性がやや劣る可能性があります。

どちらの方法を選択するかは、患者さんのご希望や具体的な口腔の状態、骨の量、予算、審美的な要求などを総合的に考慮して判断します。

3本の歯をインプラントにする場合

隣接する3本の歯が抜けてしまっている場合、主な治療方法は次の2つです。

連結させた人工歯を2本のインプラントで支える

3本の歯をインプラントにするときは、2本のインプラント使って連結させた人工歯をブリッジにする方法が一般的です。

この方法は一般的なブリッジとは違って、健康な歯を削る必要がないので既存の歯に優しく耐久性にも優れた方法といえます。

ただし、ブリッジであるため、歯の位置やあごの骨などの条件によっては支えのない真ん中の歯が壊れやすいリスクがある場合も考えられます。

連結させた人工歯を3本のインプラントで支える

特に男性の方でくいしばりが強い方の場合、2本のインプラントでは強い力に対して耐久性が不安なケースもあります。

そのような場合には、3本すべてにインプラントを埋入し、それらの上に連結させた人工歯を装着する方法を選ぶ場合もあります。これにより咬合力が分散されて破損のリスクを軽減できます。

ただし、くいしばりが強い場合、インプラントの耐久性を高めることに加えて、くいしばり自体へのアプローチも大切です。具体的には、就寝時のマウスピース(ナイトガード)の使用や、ストレスの軽減、日中の歯ぎしり・くいしばりの癖を自覚して改善していく必要があります。

すべての歯をインプラントにする場合

最後に、総入れ歯をしていた方が全ての歯をインプラントにするというケースで考えてみましょう。

インプラントは、歯が一本も残っていなかった場合でも治療ができます。

固定式のインプラントの入れ歯にする

この場合よく使われる方法は、あごに4本や6本といったインプラントを土台として埋め込み、その上から連結された義歯を固定するという方法です。

上のイラストはすべての歯を4カ所で固定しているので「オールオン4」と呼ばれます。

この方法であれば、入れ歯とは違ってインプラントが歯を固定しているので、しっかりと噛むことができますし、インプラントによってあごの骨が刺激されて、骨が痩せてしまうというリスクも抑えてくれます。

ただし、この治療法は歯が1本も残っていない場合の治療法なので、1本でも歯が残っている場合はできません。

脱着可能なインプラント入れ歯にする

インプラントと義歯を完全に固定させず、マグネットで固定する脱着可能なインプラント(インプラントオーバーデンチャー)という方法もあります。

通常の入れ歯とは違い、インプラントの土台によって入れが固定されるため、ガタツキや違和感を感じにくいというのがメリットです。

ただし、純粋なインプラントに比べると噛む力は弱い傾向にあります。

インプラント治療がもたらすお口の健康

歯を失ってしまった場合、特になくしてしまった歯が奥歯である場合には、インプラント治療が非常に有効な手段となります。

奥歯は食べ物を噛み砕く上で非常に重要な役割を果たしていて、そこがなくなってしまうと、残った歯に大きな負担がかかってしまうからです。インプラント治療を行うことで、この負担を軽減し、全体の噛む力を回復させることができます。

さらに、奥歯のインプラントは、前歯の健康を守る上でも大切です。奥歯でしっかりと噛むことができれば、前歯に過剰な負担がかかるのを防ぎ、結果として前歯の寿命を延ばすことにつながります。

また、インプラントはあごの骨に直接固定されるため、周囲の骨組織を刺激し、骨が痩せてしまうのを防ぐ効果もあります。これにより、長期的にお口全体の健康を維持することができるのです。

インプラント治療は、その耐久性と機能性の高さから、多くの場合に推奨される治療法です。失ってしまった歯の機能を回復させるだけでなく、お口全体の健康を守る上でも、インプラント治療は非常に有効な手段と言えるでしょう。

インプラント無料相談はこちら

セカンドオピニオンも受付可能です。
どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。

※医療広告ガイドラインに基づき、自由診療に関する費用および治療に伴うリスク・副作用等の情報を以下に記載しております。

インプラント治療とは

歯を失った部分の顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。顎の骨に固定されるため、天然歯に近い噛み心地や見た目を再現できるのが特徴です。

手術によるインプラント体の埋入後、骨と結合するまで数か月間の治癒期間を経て、上部構造(人工歯)を取り付けます。

インプラント治療に関する費用

内容メーカー/処置費用(税込)
上部構造(人工歯)ジルコニア/ハイトランス¥143,000
ジルコニアステイニング¥154,000
ジルコニアレイヤリング¥176,000
インプラント体(人工歯根)プラトン¥264,000
ネオデント¥297,000
ストローマン¥330,000
追加処置サージカルガイド¥66,000
ソケットリフト骨造成(GBR)¥55,000/本
サイナスリフト¥110,000

インプラント治療に伴う主なリスク・副作用

インプラント治療は、失った歯の機能や見た目を回復するための効果的な方法ですが、以下のようなリスクや副作用が伴う可能性があります。

  • 外科手術に伴うリスク
    手術後に痛み、腫れ、出血、内出血、感染症などが生じることがあります。
  • 神経や血管の損傷
    下顎のインプラント手術では、下歯槽神経や血管を損傷するリスクがあり、知覚異常や麻痺、大量出血を引き起こす可能性があります。 
  • 上顎洞への影響
    上顎にインプラントを埋入する際、上顎洞を損傷するリスクがあり、蓄膿症などの副作用が生じる可能性があります。
  • インプラントの不適合
    インプラントが骨と結合しない場合、再手術やインプラントの除去が必要となることがあります。
  • 全身疾患との関連
    糖尿病や骨粗鬆症などの全身疾患を有する方は、治療のリスクが高まる可能性があります。 ​
  • インプラント周囲炎
    術後の口腔衛生が不十分な場合、インプラント周囲の組織に炎症が生じ、最悪の場合インプラントが脱落することがあります。
  • その他のリスク
    食べ物が詰まりやすくなる、噛む感覚が自分の歯と異なる、治療費が高額で治療期間が比較的長いなどの点が挙げられます。

これらのリスクや副作用について十分にご理解いただいた上で、インプラント治療を検討される際は、治療実績が豊富で、丁寧なカウンセリングやアフターケアを提供している歯科医院を選ぶことが重要です。​

院長プロフィール

北村 英二(きたむら えいじ)

当院は、インプラント治療をはじめとする口腔外科分野において、豊富な臨床経験と専門知識を持っています。患者様一人ひとりの状態やご要望に応じた治療計画を提案し、痛みの軽減に配慮した治療を心がけています。

  • 1998年 日本大学松戸歯学部 卒業
        日本大学大学院松戸歯学研究科入学 口腔外科Ⅰ
  • 2000年 University Of North Carolina Dental Research Center Collagen Biochemistry 留学
  • 2002年 日本大学松戸歯学部顎顔面外科学 助手
  • 2006年 医療法人藤慈会 藤井病院 歯科・口腔外科 部長
  • 2015年 医療法人育進会 水口インプラントセンター新宿 院長
  • 2021年 北村総合歯科 開業  現在に至る