失った歯の代わりとしてインプラントは、多くの方に自然な見た目と機能性の点で貢献している治療法です。
しかし、この治療法には、患者さんが知っておくべき重要な側面があります。
それが治療後に気をつけなけれいけない「インプラント周囲炎」という病気です。
ここでは、インプラントを検討している方に向けて、インプラント周囲炎についての基本的な注意点についてお伝えしていきます。
Contents
インプラントとは

インプラント治療では、人工の歯根を患者さんのあごの骨に埋め込み、その上に人工歯冠(クラウン)を取り付けます。
インプラントは、その自然な見た目と機能によって、従来の入れ歯やブリッジと比べて大きな利点を提供します。
インプラントのメリット
- 自然な見た目と感覚
インプラントは自然な歯に非常に近い見た目と感覚を提供します。 - 噛む力の改善
正しく機能することで、噛む力を向上させ、食事の質を改善します。 - 口腔の健康
近隣の歯を削る必要がない治療法のため、自然な歯をより長く保つことができます。 - 耐久性と信頼性
インプラントは、適切なケアとメンテナンスにより、長期間にわたって使用することが可能です。治療後10年での残存率が9割以上、20年後でも7割を超えると報告されており、適切なケアにより40年以上使用された例もあります。
しかし、インプラント治療にはいくつかのリスクも伴います。
特に、インプラント周囲炎は、インプラントが失敗してしまう主な原因の一つとなっています。
インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎は、インプラントを支える骨や歯肉に生じる炎症のことです。
この症状は、インプラントを長期的に使っていただく上で重要な課題となっており、放置するとインプラントの固定不良や最悪の場合、失敗につながる可能性があります。
インプラント周囲炎の原因
インプラント周囲炎の主な原因は、口腔内の細菌による感染です。
これは、不適切な口腔衛生やインプラントの不適切な取り扱いにより引き起こされることが多いです。
また、インプラントの上部構造の取り付け方法によってもリスクが変わることがあります。
当院のアプローチ
北村総合歯科では、インプラント周囲炎のリスクを軽減するために、上部構造を設置する際にセメントを使用せずスクリュー固定を採用しています。
セメント固定の場合、インプラントと歯肉の境界にセメントが残ってしまうことがありこれが細菌の蓄積や炎症の原因になる可能性が報告されているからです。
スクリュー固定は、このようなリスクを軽減するだけでなくメンテナンスが容易なため、患者様の口腔健康を長期にわたって守ることができます。
ただし、状況によってはスクリュー固定が困難な患者様もいらっしゃいますので、その場合はインプラント周囲炎のリスクを十分に考慮しながらセメント固定で対応させていただく場合もあります。
インプラント周囲炎は、初期段階では症状が目立たないことが多いですが、赤み、腫れ、出血、痛みなどの兆候が見られた場合は、速やかに歯科医院で診断を受けることが重要です。
インプラント周囲炎の原因
インプラント周囲炎は、複数の要因によって引き起こされます。
主な原因としては下記のようなものがあります。
- 口腔衛生の不備
インプラント周囲炎の最も一般的な原因は、不適切な口腔衛生です。定期的な歯磨きやフロス使用が不十分な場合、プラークや歯石が蓄積して、細菌感染を引き起こす可能性があります。 - 喫煙
喫煙は歯肉の血流を減少させ、インプラント周囲の組織の回復能力を低下させます。これにより、炎症のリスクが高まります。 - 糖尿病
糖尿病患者は、一般的に感染症に対する抵抗力が低下しており、インプラント周囲炎のリスクが高まります。 - インプラントの不適切な設置
インプラントが適切に設置されていない場合、周囲の組織に過度のストレスがかかり、炎症を引き起こす可能性があります。
これらの原因を理解して適切な予防をしていくことが、インプラント周囲炎を防ぐためには大切です。
予防方法
インプラント周囲炎は適切な予防策によって大きくリスクを減少させることが可能です。
予防法としては次のようなものがあります。
定期的な口腔衛生の維持
- 毎日のブラッシングとフロッシング
インプラント周辺のプラークを除去するために、毎日のブラッシングとフロッシングが不可欠です。 - 専用の口腔ケア用品の使用
インプラント専用の歯ブラシやフロスを使用することで、より効果的にプラークをコントロールできます。
定期的な歯科検診
- 定期的なプロフェッショナルクリーニング
専門の歯科医師による定期的なクリーニングは、プラークや歯石の除去に不可欠です。 - 早期発見と治療
定期的な検診により、インプラント周囲炎の初期症状を早期に発見し、適切な治療を受けることができます。
生活習慣の改善
- 禁煙
喫煙はインプラント周囲炎のリスクを高めるため、禁煙は非常に重要です。 - 健康的な食生活
栄養バランスの取れた食事は、全体的な口腔健康に寄与します。
インプラント周囲炎の治療法
万が一、インプラント周囲炎が発生してしまったら、何より早期の治療が重要です。
炎症を抑えてインプラントの機能を維持するために、一般的な治療法としては次のようなものがあります。
- プロフェッショナルクリーニング
歯科医師による専門的なクリーニングは、インプラント周囲のプラークや歯石を除去し、炎症を減少させるのに効果的です。 - 抗生物質の処方
炎症が重度の場合、抗生物質の処方が必要になることがあります。これは、感染を抑え、炎症を減少させるために使用されます。 - 外科的処置
インプラント周囲炎が進行している場合、外科的な処置が必要になることがあります。これには、感染した組織の除去やインプラントの再配置が含まれることがあります。 - 定期的なフォローアップ
治療後の定期的なフォローアップは、インプラントの健康を維持し、再発を防ぐために重要です。
当院では、患者様の状況に合わせた最適な治療計画を提供し、インプラントの健康を維持するためのサポートを行っております。
まとめ
ここでは、インプラント治療を検討している方々に向けて、インプラント周囲炎のリスクとその予防方法について詳しくお話させていただきました。
インプラントは、適切なケアとメンテナンスを行うことで、長期的に安定した結果を提供することができる治療法です。
そして、長期的にインプラントを使っていただくために一番重要なのがインプラント周囲炎にならないことです。
インプラントには神経が通っていないため痛みを感じません。
そのため、インプラント周囲炎は自覚しにくく、気がついたときには重症化しているということも少なくありません。
これから、インプラント治療をされる方は、特にこのインプラント周囲炎にならないための日々のメンテナンスが重要だということをぜひ覚えておいてください。
※医療広告ガイドラインに基づき、自由診療に関する費用および治療に伴うリスク・副作用等の情報を以下に記載しております。
歯を失った部分の顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。顎の骨に固定されるため、天然歯に近い噛み心地や見た目を再現できるのが特徴です。
手術によるインプラント体の埋入後、骨と結合するまで数か月間の治癒期間を経て、上部構造(人工歯)を取り付けます。
インプラント治療に関する費用
内容 | メーカー/処置 | 費用(税込) |
---|---|---|
上部構造(人工歯) | ジルコニア/ハイトランス | ¥143,000 |
ジルコニアステイニング | ¥154,000 | |
ジルコニアレイヤリング | ¥176,000 | |
インプラント体(人工歯根) | プラトン | ¥264,000 |
ネオデント | ¥297,000 | |
ストローマン | ¥330,000 | |
追加処置 | サージカルガイド | ¥66,000 |
ソケットリフト骨造成(GBR) | ¥55,000/本 | |
サイナスリフト | ¥110,000 |
インプラント治療に伴う主なリスク・副作用
インプラント治療は、失った歯の機能や見た目を回復するための効果的な方法ですが、以下のようなリスクや副作用が伴う可能性があります。
- 外科手術に伴うリスク
手術後に痛み、腫れ、出血、内出血、感染症などが生じることがあります。 - 神経や血管の損傷
下顎のインプラント手術では、下歯槽神経や血管を損傷するリスクがあり、知覚異常や麻痺、大量出血を引き起こす可能性があります。 - 上顎洞への影響
上顎にインプラントを埋入する際、上顎洞を損傷するリスクがあり、蓄膿症などの副作用が生じる可能性があります。 - インプラントの不適合
インプラントが骨と結合しない場合、再手術やインプラントの除去が必要となることがあります。 - 全身疾患との関連
糖尿病や骨粗鬆症などの全身疾患を有する方は、治療のリスクが高まる可能性があります。 - インプラント周囲炎
術後の口腔衛生が不十分な場合、インプラント周囲の組織に炎症が生じ、最悪の場合インプラントが脱落することがあります。 - その他のリスク
食べ物が詰まりやすくなる、噛む感覚が自分の歯と異なる、治療費が高額で治療期間が比較的長いなどの点が挙げられます。
これらのリスクや副作用について十分にご理解いただいた上で、インプラント治療を検討される際は、治療実績が豊富で、丁寧なカウンセリングやアフターケアを提供している歯科医院を選ぶことが重要です。
院長プロフィール

北村 英二(きたむら えいじ)
当院は、インプラント治療をはじめとする口腔外科分野において、豊富な臨床経験と専門知識を持っています。患者様一人ひとりの状態やご要望に応じた治療計画を提案し、痛みの軽減に配慮した治療を心がけています。
- 日本口腔インプラント学会 専門医
- インプラント講習会のインストラクター
- インプラントメーカー公認インストラクター(プラトンジャパン)
- 日本歯科放射線学会 優良医
- 日本歯科医師会 所属
- 多数の学会発表、インプラント専門誌、学術誌での発表実績あり
- 1998年 日本大学松戸歯学部 卒業
日本大学大学院松戸歯学研究科入学 口腔外科Ⅰ - 2000年 University Of North Carolina Dental Research Center Collagen Biochemistry 留学
- 2002年 日本大学松戸歯学部顎顔面外科学 助手
- 2006年 医療法人藤慈会 藤井病院 歯科・口腔外科 部長
- 2015年 医療法人育進会 水口インプラントセンター新宿 院長
- 2021年 北村総合歯科 開業 現在に至る